知恵だより 021号

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Oct. 3 1999

クマの足跡

鹿追町
長い一日を歩き終えた崎野さん(左)と私

99年10月3日、気温:4度、天気:午前中雨、午後晴れ、風:不明
出発地:然別湖畔・熊沢
出発地:到達地:河東郡鹿追町瓜幕橋 北緯:43度10分12秒/東経:142度58分59秒
歩いた距離:28キロ

 歩き始める前には雨がしとしと降っていました。秋の色にそまった葉っぱが強い風にあわせて、前後に踊っていました。今日はこれまでで一番寒い朝だったので、雨具の下にもう一枚重ね着して歩き始めました。

 「知恵めぐり」プロジェクトが知床半島で始まってから、崎野隆一郎さんという人が、僕たちの冒険を大きく支えてくれています。崎野さんはテントを張る場所を見つけてくれたり、みんなにメッセージを送れるように電気のおもちゃ(コンピューター、電話、カメラ)をつなぐ電源を見つけてくれたり、それ以外にも言い表せないほどのサポートと励ましをしつづけてくれています。

 崎野さんはここ20年ほど、然別湖をネイチャーガイドの場所としてきました。幸運なことに、今日、然別湖から鹿追町の郊外までの28キロを丸まる、崎野さんは僕と一緒に歩いてくれました。歩いている間ずっと、崎野さんは僕に辺りの自然の説明をし、加えて子供たちに自然について教えることについての見方も話してくれました。

 寒さに震えながら、しばらく黙って一緒に道路を下りました。「カワアイサが湖にいるな」と崎野さんが言いました。見ると彼の顔は、双眼鏡とひげですっかり隠れています。「このカワアイサたちは今年の夏にここで生まれたんだ。もうじき南に飛んでいくよ」寒さの中で歩きつづけながら、僕たちの目はまた道路に戻っていきました。雨はみぞれに変わっていました。

 午後までに雨は通りすぎて、太陽が僕らの凍えて濡れた体を暖め始めてくれました。崎野さんと僕は湖から離れ、舗装されていない道に入りました。それはこの旅が始まってから初めてでした。古い林道は然別川沿いに十勝平野に続いています。その古い道の小石と土は僕の靴の底を柔らかく受け止め、僕の足は大変快適でした。

 一緒に丘を歩きながら、崎野さんは若い人たちに自然について教えることについての考えを話してくれました。「よく学校の先生がこう言うんだ。バードウォッチングをしに然別湖に来たいって。そんなときはわざわざここまでやってくることはないでしょうって、先生たちに僕は言うんだよ。子供たちは学校に行く途中で十分にバードウォッチングを楽しめるさ」。崎野さんは自信たっぷりに言いました。

鹿追町
ひづめがついたシカの足の骨。去年の冬は大変厳しかったといいます。

 「自分たちが住んでいる場所に何種類の鳥がいるかを知っている子供がどのくらいいると思う?フキがどうして歩道を突き抜けて大きくなるか、不思議に思うだろうか?」崎野さんは僕の返事を待たずに次々と聞いてきました。しゃべっている間も周囲の景色に気を配りながら、崎野さんは続けて言いました。「そうした好奇心を創り出したり、自分たちの身近な自然に目を向けさせたりすることが、子供たちにとっては学びの出発点としては最高なんだと思う」。

 「シカのひずめだ」と崎野さんが興奮してしゃがみ込みました。林道の上で冬の間に死んでしまったシカの骨があったのです。「こんなのは大きな道では見つけられないよ」。

 「自然そのものから教わることがたくさんある」と崎野さん。きのこのバクテリアは木の幹を弱くして、その結果、木は地面に倒れてしまいます。これは必ずしも悪いことではありません。木は土に戻り養分となって、森のほかの生命の基礎を作るのです。

鹿追町
クマの前足(左)と後足(右)の跡。崎野さんの手と比べると大きさが分かるで しょう。

 これを観察してみると、腐ることは必ずしも悪いことではないとわかってきます。腐るというのは良いことなんだと、よく子供たちに話します。腐るものはよいもので、腐らないのはおそらく悪いものなのでしょう。これは人にも同じ事が言えます。腐るような経験をしていない人は、強く大きくならないでしょう。自然を観察しながら、数知れない発見があるものです。そうしたことを見出す力がカギでしょう。

 今日の一番の発見はクマの足跡でした!後ろ足の大きさは、崎野さんの手よりもじゃっかん大きいくらいです。「このクマはたぶんこの道を楽々と歩いていったんだな」と崎野さんは足跡を見ながら言いました。「ここは森の端っこと開けた土地のちょうど境目だ。食べ物もたくさんあるし、たぶんこの広々した所はクマが歩き回って楽しい場所なんだろう」。崎野さんはまるでクマと同様にこの道を楽しんでいるかように、ニコニコしながら言いました。

然別湖
紅葉で染まり始めた然別湖

 崎野さんは然別湖で暮らしながら、ほかにもいろんなことを学んだのだろうと思います。崎野さんと過ごしたほんの少しの時間だけで、僕はもっとほかのことも彼から知りたくなりました。

 今日だけで崎野さんは湖のカワアイサや、林道のシカのひずめやクマの足跡を僕に気づかせてくれ、森の違った見方を教えてくれました。僕は歩きながらこのアンテナを出しつづけますし、みんながそれぞれ暮らしている地域でどんな発見をしたかを聞くのを楽しみにしています。

 グレッグ

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