知恵だより 028号

Oct. 10 1999

山で遊ぶ・・・アイヌの伝統

作ったばかりの笛を吹く貝沢さん=沙流郡平取二風谷

99年10月9日、気温:10度、天気:晴れ、風:北西
出発地:平取町(びらとり)町・幌毛志(ほろけし) 北緯42度43分06秒/東経142度15分38秒
到着地:平取町(びらとり)町・二風谷(にぶたに) 北緯42度37分42秒/東経142度8分55秒
歩いた距離:12キロ

 今日、沙流川の流れにそって歩きました。これまでに見た中で、もっとも川幅の広い川でした。谷間を曲がりくねって続いています。川はさらに広くなり、やがて巨大な「二風谷ダム」に出ます。

 アイヌの伝統を受け継いでいる貝沢薫さんと、今日の午前中、森の中で過ごし、、自然と遊ぶことがアイヌの人たちの文化でどんなに大切なことか学びました。

 沙流(さる)川へ流れこむ小さな緑色の流れの前での儀式から森での一日が始まりました。

 森に入る前に、貝沢さんは日本酒の入れ物のふたを取り、「しばらくこの山で遊ばせてください」といいました。「山の神様のために」と、茂った草の上に酒をまき、「一部を神様に差しあげて、一部は自分でのみます。山菜を採ったり、木を切ったり、草を刈ったりするために山に入るときは必ずこうします」。

 しばらく歩くと、小さな谷間にでました。山から流れているその澄んだ水にも、貝沢さんは同じように、酒をたらして、「水の神様のために同じことをします」といいました。

 神様に山で遊ぶ許しを得て、まさにその言葉通り、僕たちは遊び始めました。

 貝沢さんは手おのを一振りして、柳の枝からつえを作りました。それから、あたりに生えている植物を入念に調べ、また手おのの一振で、イタドリという植物から、笛を作りました。

 かとおもうと、次にはそこにあったつるを切って引っ張り、あっという間にぶらんこを作りました。地上2.5メートルほどの高さの枝からさがったつるのぶらんこに僕は必死でしがみつき、ゆれ具合をためしました。

 次に貝沢さんが作ってくれたのは、以前は子どもたちがよく遊んだという枝と、輪のおもちゃでした。つるの輪を空中に投げ上げ、落ちてくるところを長い枝のまたの部分で受けるのです。地面に斜めにさした枝を手で支えながら、その下をくぐる遊びでは、僕の体力と平衡感覚が試されました。

山で遊ぶ許可をもらうために、草の上に酒をまき、山の神様に捧げる貝沢さん=沙流郡平取二風谷

 さらに遊びは続きます。

 小さな濁った流れのそばに身をかがめて、流れの中から石をひっくり返して、「子どもの頃はこういうところでよくザリガニを探したものだよ」と貝沢さんは懐かしそうにいいました。

 「捕まえるまでは、ただの遊びなんだが、捕まえたら、それは、おやつになる。石は水生昆虫やザリガニのすみかになるから、元の場所に戻すように子どもたちは言われたものだ」「自然と一体になると、時間を忘れてしまう」と貝沢さんつけ加えました。自然を敬いながらそのなかで遊ぶさまざまな方法があることに、とても感心しました。

 自然の豊かさの中で生活し遊ぶことを抜きにして、アイヌの文化は語れませんと貝沢さんは、誇らしげにいいます。「残念ながら今の子どもはこういうことを教えてもらっていない。現代社会では自然にふれる機会があまりにも少なすぎる」ともいいます。

 貝沢さんは、「自然を敬うこと、そして自然と遊ぶことの二つが、アイヌの文化を説明する上で大切な特長で、このことが、アイヌの人たちが子どもを育てるためにとても大切にしているなことなんだよ」と貝沢さんはいいました。その考えは私たちみんなに大切なのではないでしょうか?

 みんなはどこでどんな遊びをしますか?そして、遊びから何を教わりますか?貝沢さんと出会って、みなさんに伝えたいことがいっぱいできました。明日も楽しみに待っててね。

 グレッグ

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