知恵だより 038号

Oct. 20 1999

キノコ狩り

カゴ一杯の取り立てのキノコと植田さん=然別湖熊沢で

99年10月20日、気温:8度、天気:雨、風:無風
出発地::千歳市・支笏湖 北緯42度43分29秒/東経141度49分05秒
到着地:苫小牧市錦岡 北緯42度37分07秒/東経141度30分09秒
歩いた距離:29.6km

 雨の降る10月の支笏洞爺国立公園の裏道を歩いていると、めったに人に出会うことはありません。森の中の道に何台も並んで止まっている自動車の列で、他の人がいるとわかります。キノコ狩りの人たちです。

 男の人が二人ビニールの袋を持って森の中へ入っていくのを遠くから見かけました。その袋を見た時、然別湖の近くで会った植田さんという人を思いだしました。沢山のキノコ狩りの人たちに出会いましたが、植田さんのような人はちょっといないと思います。

 植田さんは日本菌類学会の会員です。ベストにゴルフボール位の大きさのクマよけの鈴が二つもついていました。

 「今の季節、森の中にはキノコがいっぱい生えています」といいながら、発泡スチロールの箱いっぱいのキノコを見せてくれました。キツネタケ、コガネタケ、など、植田さんが指さしながらおしえてくれるキノコの名前は僕のメモ帳に書きれないくらいたくさんありました。

 「今年はキノコ狩りに来る人が多いんだけれど、正しいキノコ狩りのしかたを知らない人も少なくないです。キノコを根元からとってしまうと、来年同じところには生えません。それに、最近の人はキノコを入れるのにビニールの袋を使うんです。そうすると、キノコも菌も持って帰ることになります。ほら、私の入れ物を見て下さい」と植田さんは竹で編んだカゴを見せてくれました。「これなら歩いている間にカゴの網目から菌が森にばらまかれて、菌が落ちたところから来年キノコが生えてくるんです」

 先のことを考えた行動が、北海道の森で行われているのです。エコシステムの連鎖の中でキノコの果たす役割はとても大きいのです。「キノコ類は有機物を腐らせて分解し、土の栄養分を作るんです。健康な森にはたくさんのキノコが育つんです」と植田さんは教えてくれました。

 道端に停めてあった車の数からして、この森の健康状態はかなりいいようです。でもみんながビニール袋を使ってキノコを持って帰ったら、森の将来はどうなるんだろうと、心配になりました。

 どこにキノコが生えているか、知っている人はたくさんいても、森の環境に影響を与えない様な取り方を分かっている人は少ないということを、植田さんは伝えたかったんだと思います。自然と仲良くしながら、キノコを採ることを知らない人がいるのは、キノコが森や、人間にとって大切な役割をしていることを知らないからでしょう。

 植田さんのカゴのようなちょっとした工夫や、ちいさなキノコの果たす役割を知ることなど、ささいなことのように思えるかもしれません。でも、小さなことの積み重ねが知恵につながるのかもしれません。

 グレッグ

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