知恵だより 060号

Nov. 11 1999

砂地に作物を育てる

初めてつくったカブを手にした農家の人。新しい作物、新しい挑戦です=飽海郡 遊佐町で

99年11月11日 気温:5度 天気:晴のち曇り 風向き:北西
出発地:秋田県と山形県の県境にある三崎公園=北緯39度07分00秒/東経139度52分33秒
到着地:酒田市上本町=北緯38度54分43秒/東経139度50分50秒
歩いた距離:27km

 今朝は、日本海からの強い風とたたかい、経済的にも新しい試みをしている農家の人にあって話を聞くことができました。

 太陽がのぼる少し前に起きて、小高い所にある公園から海を見下ろしました。漁船の上で漁師さんが網を上げていました。この時期は日本海からの強風はまだ吹きつけてきません。海は鏡のように静かでした。キャンプの僕には幸いなことでした。

 1689年に有名な詩人であり旅人であった松尾芭蕉が通った「奥の細道」はここですという碑がたっている場所から歩き始めました。芭蕉が俳句によんだ300年前のこの辺りの自然はどんな風だったのだろう、と考えずにはいられませんでした。ごつごつした岩肌のがけの上は松林におおわれています。松の木はみんな海と反対の方向にかしいでいます。幹の肌を見ると、強い風や塩にさらされた年月が手に取るようによくわかります。

砂地に育つネギ、未来の防風林になる若い木が後ろの方に見えます=飽海郡遊佐町で

 三崎公園を出て、秋田と山形の県境を越えました。海岸沿いの松林は西の方へ続いています。東側には碁盤の目のような田んぼがずっと山すそまで広がっています。そこから少し先へ行くと景色が突然変わりました。松林は同じなのですが、その東にあるのは砂地のようにみえる畑です。どんな野菜が砂で育つのでしょう。僕には想像もつきませんでした。

 農家の人に何を作っているのか聞いてみました。「砂は悪くありません。水はけがいいんですよ。米にはむきませんが、野菜は良く育ちます」といって、そこの畑で育てている大きくてみずみずしいネギを指さしました。「問題はね。風なんですよ、風と風が運んでくる砂が一番作物に良くないんです。でも100年以上前にここで農業を始めた人たちが木を植えてくれたおかげで何とかやっていけるんです。海岸や崖の上の松林を見たでしょう。木を植えてくれた人たちに感謝して、毎年豊年祭りをするんですよ。ほら、こうやって今も木を植えることを忘れてはいませんよ」といいます。彼女が指差した砂地の丘の上に若い木が育っていました。何世代もの知恵がこの砂地を作物がとれる農地にしてくれたのです。

早朝の日本海=由利郡象潟町三崎公園で

 古い知恵が息づく所には新しい工夫も育ちます。カブをつくっている農家の人がそれを教えてくれました。実は今年初めてカブをつくってみるんだとその人はいいました。「都会の消費者の声を聞かないといけないからね」とその人はいいます。「そうしないと、農家としてやっていけなんです。カブは消費者の要望に応えるための実験です」。カブは大きくおいしそうでした。「農家はだれでもそれぞれ工夫しています。私たちの工夫は新しいものを試してみるということです。カブを作るのは手間がかかるので、あんまり育てている人は多くはないのです。何回も失敗をしましたよ。でも最後は食べ物を作り上げることができるのです」といってニッコリと、いい笑顔を見せてくれました。その人の勇気をすばらしいと思いました。

松の防風林、手前に砂地のダイコン畑=飽海郡遊佐町で

 歩けるようになるには何度もころばなければだめだとよくいいます。今日は昔からの伝統を守って黙々と防風林を植え続ける農家の人と、新しい挑戦をする農家の人に出会いました。どちらも、うまくいくといいなと思います。

 みなさんはどうですか。なんど失敗しても、何かをやり遂げたことはありますか。

 グレッグ

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