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| Nov. 18 1999 |
森を守った狩人
民宿「朝日山の家」の窓に鳩を追いかけてきたタカを観察する志田さん=西川 町大井沢で 99年11月18日 気温:4度 天気:雨 風向き:北西
現在地:西川町大井沢=北緯38度24分14秒/東経139度59分35秒
歩いた距離:0km今日は狩人(かりうど)の志田忠儀(ただのり)さんと過ごす二日目でした。志田さんは、知恵とは何か、また狩人としての60年を越す経験を通じてのどのように森を守る活動してきたかを教えてくれました。
「狩人の知恵とは、動物の習性を知ることにつきます。自分が捕まえようとしている動物の習性を知らなければ良い狩人とはいえません。以前小さな獲物だけを捕っていた頃は、動物をじっくり観察したり、逃げる様子を見て、捕まえ方を考えたものでした。それがなければどんな獲物も捕まえられはしません」
志田さんはひとつの例をあげてくれました。
「動物は、温度や天気の変化にとても敏感です。例えば、雪がふりそうになると、ふだんは山の中腹でねむるノウサギが寝場所を頂上に変えるし、強い風が吹くときは山ではなく谷間で寝る。寒くなると、ノウサギはとても敏感になってほんのちょっとの物音でも逃げ出すよ。暑い時は、のんびりしているな」と説明しながら、志田さんはそういうことを知らなければ、狩人は生活していけないといいます。「ある谷でノウサギを一匹捕まえたからと、またいるだろうと同じ所へ狩に出かけても、それは大きな間違いなんだよ」。
動物の習性を良く知ることが狩人の知恵だといいながらも、自分に獲物を与えてくれる土地を守ることこそ知恵だと志田さんは予感していました。
大井沢の村を見晴らす丘にたつ志田さん。ブナの森の番人です=西川町大井沢 で 昔は、朝日連峰での木の伐採は毎年100立方メートルくらいだったといいます。ところが1960年代に電気ノコギリとワイヤー集材機が使われるようになってから、それが急に300倍にもなってしまいました。「朝日連峰は国立公園に指定されましたが、ブナの伐採は続いていたのです」と志田さんはいいます。
これではいけないと決意させた理由は何かとたずねると、「あの調子でどんどん木を切っていったら、10年もしないうちに山は丸坊主になってしまったはずなんだ」と感情を込めて答ました。
「子どものころ、イワナを捕まえた川は戦争中に木を切り過ぎたからすっかり干上がってしまった。木を切っても10年は根っこが土をまもってくれますが、その根っこが腐ると雨が土を流してしまって、川は干上がる。森の木をあれほど切ってしまったら、雨は洪水をよび、反対に日照りの時は田んぼに入れる水もなくなると思いました。それで、町長の所へ行って何とかしてくれと頼んだんです」。
志田さんは県の役人にも会いに出かけましたが、まったく相手にされませんでした。自然保護の活動をしている人たちに出会って、初めて地元の活動が必要なんだと気がつきました。地域の人が中心の「朝日連峰のブナを守る会」が活動をはじめたあと、1975年になって朝日連峰内の森林伐採がやっと収まったのでした。
志田さんと交わした会話の最後に今まで最高に幸せだと思った瞬間はいつですかと聞きました。
初めてクマを捕まえたとき。胃に命中した一発でしとめたんだ。もうひとつは、森を守ろうとしていたことは間違っていなかったことを確認したときはうれしかったな」と答えてくれました。
志田さんが一番しあわせだと感じたふたつの瞬間は、自然に対する知恵を持ち、その自然を守ろうとした志田さんの生き方を象徴していると思います。僕たちは、志田さんのあとに続くことができるでしょうか。 グレッグ
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