知恵だより 069号

Nov. 20 1999

ニホンカモシカ調査

99年11月20日 気温:8度 天気:晴時々曇り 風向き:南西
現在地:西村山郡朝日町=北緯38度14分19秒/東経139度59分37秒
歩いた距離:0km

 磐梯朝日国立公園の外れに、朝日鉱泉ナチュラリストの家があります。

 近くの山々や川、森や野生動物を見に来る自然愛好家達のセンターとしてよく使われる山小屋です。今日はニホンカモシカ調査グループの7人のメンバーが年に何回か行う調査のために集まっていました。今日の目的はニホンカモシカの習性について情報を集めることです。ニホンカモシカは、天然記念物に指定されています。

 この調査隊のリーダーの岡坂さんが案内してくれて、僕は初めてカモシカを見に出かけました。4日間の調査の初日の今朝9時に皆は集まりました。ブナ、カシ、クリ、サワグルミの木々におおわれた狭い谷のはるか向こうに朝日岳が堂々とそびえていました。山の頂上にはうすい雲がかかっています。グループの人たちは、谷間のカモシカを調査するために、それぞれバラバラの方向へと散って行きました。

 僕たちがトチの木の森に入ると、岡坂さんが二匹のカモシカ、「まさと」、と「ゆりこ」の話をしてくれました。この森にいるカモシカは皆名前があり、顔も違うのです。調査の人たちは一匹でも見逃さないようにと一生懸命なのです。「私たちの調査の目的は、一定の地域内でのカモシカの社会的な行動を見つけ出すことです。そのためには、まずそれぞれのカモシカを見分けなければなりません」と、岡坂さんが、説明してくれました。

 僕たちは、朝日川にそった谷を下っていきました。岡坂さんはちょっと行っては止まり、その度に、双眼鏡で、谷の反対側の斜面を調べていました。20年以上もの長いカモシカ調査を通して、その双眼鏡は岡坂さんの手や目に、とても良くになじんでいるようでした。

 歩きながら、岡坂さんは、この調査の目的についてもっと話してくれました。「日本の動物達はとっても地味なんですよ。だから、僕たちの調査は人々に自然に目をむけさせる方法のひとつなんです。カモシカについている名前は、人間と自然とのある種の友情を育んでくれます。自分が名前を付けたカモシカを、忘れるなんてことは絶対ないでしょう。この朝日岳付近のように、日本にも人が野生動物を簡単に見られる場所は日本にはほかにほとんどありません。カモシカはまた一番見やすい動物なんですよ」といいます。

 カモシカを見つけた!という知らせが無線で飛び込んできました。何分か来た道を戻って、僕たちは、左側の斜面に目を凝らしました。「いたぞ!」。岡坂さんが興奮して言いました。「あれは、この春に生まれたばかりの子だ」

 僕はまだ、うっそうとした森の中に、毛の生えた動物の姿を見つけだそうとしていました。確かに、若いカモシカが一頭、草を食べながらうろうろしていました。

 僕たちは、一時間以上も、このカモシカを観察していました。岡坂さんは、カモシカ全部の個性を細かい所まで知っています。そして、双眼鏡の小さな穴を通して見える小さな顔を絵に描いて書き留めていました。また見つけました!遠くの方にある雪の塊かと思ったですが、カモシカだと分かりました。僕たちは一時間近くもそのカモシカが起きるのを待ったのですが、無駄でした。僕たちは、午前中も、午後も、谷を歩き回り、カモシカが動き出すのを待ったり、草を食べたり、昼寝をしたりするのを観察したりしました。このクラブは、人々が朝日岳の自然を楽しめる、わくわくするような、そしてリラックスできるような方法を育ててきたのです。

 20年以上にも及ぶ、この調査は野生動物と人間との関係に良い結果をもたらすだろうと岡坂さんは思っています。「人間は、それぞれの野生動物の習性だけでなく、全体としての生態系を知らないと、絶対、野生動物に関わる問題を解決できないと思いますよ」といいました。調査にはこのことが一つの動機になっているけれど、たぶん、岡坂さんと仲間たちにとって、カモシカがなにより好きなんだというのが、一番大きな理由だと思います。

 グレッグ

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