知恵だより 078号

Nov. 29 1999

菓子と漬物と俳句

菓子の前に立つ今さんの奥さん=山形県西置賜郡小国町で

99年11月29日 気温:0度 天気:雪 風:なし
現在地 西置賜郡小国町=北緯38度03分42秒/東経139度45分33秒
歩いた距離:0km

 みなさんはものを食べているとき、どんなことを考えていますか。おいしいなあ。お腹が空いてるなあ。こういう思いは味をさらに引きたてます。こういう場合、頭に浮かぶ考えがいくつかあると思います。和菓子の角松屋の今さんとの短い出会いは、出された食べものを感謝しながらいただくのがいかに大切であるかということをわかれせてくれただけでなく、日本の文化をいっぱい経験させてもらうことになったのです。

 ◆心のこもった食べ物

 和菓子の角松屋の今さん夫婦の望みは、ただお客さんに自分の店のお菓子を食べてもらえばいいというのではありません。「お客さんにお菓子を美味しく食べてもらうと同時に、私たちが込めた心を受け取って欲しいのです。食べ物の中には目では見えないものがいっぱい入っています。うちのお菓子の中には善意が詰まっています。お菓子を作った職人の顔がお客さんに想像してもらえるようになりたいのです」というのが今さんの奥さんの言葉です。彼女はたいへん明るい人柄で、その明るさに僕も染まってしまったくらいです。彼女は黒地のシャツの上に日本の藍(あい)染めのエプロンを着け、そでをひじまでまくり上げていました「いい店、いい味、いい出会い。これが我が店のなんですですよ」といいました。

素早い動作でまんじゅうの皮であんを包む今さん

 まんじゅうの皮とあんができあがったからと、お菓子を作る部屋に呼び入れられました。今さんは小さな木のしゃもじを巧みに使って丸めたあんを、薄い皮の中に包み込んでいました。奥さんも手伝っていました。ふたりの手の動きの巧みさは長年にわたる経験の深さを示していて、そのほほえみは誇りをもって話してくれた彼らの心を映していました。

 この考え方は菓子だけに留まりません。奥さんはお茶漬けを手渡してくれながら「どんなものを食べるにせよ、それに込められた心を同時に食べさえすれれば、必ずおいしく食べられるものですよ」といいました。ここで食べたお菓子とお茶漬けは、今回の旅で一番おいしかったものの一つになることは間違いありません。

僕が作ったダイコンの漬け物

 ◆ダイコンの漬け物

 奥さんは僕の限られた時間に日本の文化をできるだけたくさん学ばせようと、してくれました。「漬け物は日本の文化ですよ。やってごらんなさい」と教えられました。気がつかないうちに、店に大きなおけと一緒にカキ、アカトウガラシが運び込まれていました。僕のふくらはぎほどもある太いな大根を2本手渡して、ちょっと命令ぎみに、でも優しく「さあダイコンの漬け物を作りましょう」と奥さんはいいました。生まれて初めての体験にすっかりうれしくなって、ダイコンの皮をむいて4分の1に切りました。

 準備ができると、奥さんは僕に、ダイコンをカキ、アカトウガラシと一緒におけに入れるようにいいました。そこで、僕がカキとトウガラシをダイコンと混ぜ合わせて、奥さんが砂糖、塩と焼酎を加えました。そして最後に上手に混ぜあわされた漬物おけの上に大きな重しを2つのせました。2日もすればこの漬物は食べられるそうです。

 「よくできました」と奥さんは大声でいいました。「これが日本文化よ。すごいでしょ」。ダイコンを漬けるのに使ったカキはうれきっていたものでした。「私たち日本人はうれきったくだものまで工夫して使いますが、これもその利用方法の一つなんです。こうしてカキの味を蘇らせるのですよ」

書道の練習をする今さんの奥さん。大きな夢と書いています。

 片づけて手を洗っていると、奥さんは僕が切り落としたダイコンの葉を切りとって、まず塩をしてから、ゆすいで、しばって袋に入れました。そして「ダイコンの葉はみそ汁の具として青い野菜の少なくなる冬中使えます」といいました。伝統の豊かさで、日本に匹敵する文化は他にもあるけれども、日本はかなり高い位置を占めると思います。

 ◆俳句(五、七、五)

 日本文化体験講座はその後も続きました。今さんの奥さんは「私は俳句を詠むのが好きです。ひとつの俳句の中に全宇宙を組み入れることができるのです。たった一句の俳句で一冊の本以上のことを表現することができます。あなたのために一句詠んであげましょう」。喜んだ僕は彼女の筆が紙の上を優雅に滑るのをじっと見ていました。

 「夢語る 異国の青年 雪がふる」と彼女は書きました。彼女の好意に応えようと僕も句をよもうと試みました。宇宙をどの程度一句の中によみ込めたかは分かりませんが、私は自分の未熟さを認めたうえで、この句を今さんに返しました。

 「雪の中 心豊かな 角松屋」

 最近は英語で俳句を詠む人もたくさんいます。僕の句は英語ではこうなります。
Amidst the snow, warm and rich in heart Kadomatsuya

 みなさんもよんでみたらどうですか。

グレッグ

 今日一日の体験は特別のものになりました。それを通じて日常生活において、忘れられがちな食べ物に対する感謝の気持ち、いろいろなものを無駄にせず上手に使う工夫、そしてすくない言葉に、多くのことを含ませる表現様式、この3つのことを考えさせてくれたのでした。

  1. 食べる時、いつもどんなことを考えていますか。
  2. 漬物をつけたことがありますか。
  3. 俳句を作ったことがありますか。

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