知恵だより 093号

Dec. 14 1999

わらのレインコート

浅井さんにみのをきせてもらう=守門村で

99年12月14日 気温:-1度 天気:雪 風向き:西
出発点:北魚沼郡守門村福山=北緯37度21分00秒/東経138度59分32秒
目的地:北魚沼郡広神村清本=北緯37度36分32秒/東経138度59分32秒
歩いた距離:20km

 朝6時、除雪車が高く吹き上げる雪の雲と一緒に山道を僕は歩いて行きました。朝早くまだうすぐらい中で、シャベルや小さな「すき」で、雪を道の両側につみ上げている人たちに出会いました。雪の高さは僕の肩ほどにもなっていました。

 山道への道沿いに家が何軒かありました。そして、道の反対側には自然と共に暮らす知恵がいっぱいありました。守門村の中心を歩いて行くと、「着ござ」を着た男の人とすれちがいました。ナイロンや、プラスチックや、それこそ防水のゴアテックスなどがいっぱいある今の時代に、なんでこの人が「着ござ」を着ているのか不思議でした。聞いてみると「この天気にはこれが一番で、これほど着やすいものはほかにないんですよ」と浅井さんというその人はいいました。僕がもっと質問しようとする前に、浅井さんは、僕を車庫に案内してくれました。そこには「みの」(わらで出来たレインコート)、「かさすげ」(荷物を背負うために背あてがついた上着)がいくつもありました。「全部自分で作ったんですよ」と浅井さんはいいます。

 「みの」や「かさすげ」を作るには、細かくていねいにわらを編んでいかなければなりません。わらのあみ目を見てもいったいどういう編み方なのか検討もつきませんでした。「みの」を着て雪のなかに立ってみたら、ぬれませんでした。

刈り取った稲を運んだりするのに使ったわら製の「かさすげ」=守門村で

 60歳代や70歳代の人の中にはこのような技術を持った人が確かにたくさんいます。全部自然の素材を使ってつくるわらのレインコートは、自然の厳しさから自分を守るひとつの方法を教えてくれています。

 「みの」は、かつて人間がほとんど自然を傷つけることなく自らを守っていたことを示しています。時代が変わって、このような自然の材料を使った伝統的な衣服は、田舎でも、だんだん聞かれなくなっています。

 「工場で作ったレインコートが、今ではどこででも手に入りますから、こんなものは、もう誰も使いません。それに、作り方を知っている人はもうほとんどいないのですよ」と浅井さんが説明してくれました。「かさすげは、昔、田んぼから米を運ぶ時に背中にあてるのに使ったのです。今は、どの田んぼに行くにも道がありますし、ほとんどの人が車を持っていますからこれも使う必要がないんです」といいます。

 必要がなくなれば、習慣もやり方も変ります。良くも、悪くも変わっていきます。

 浅井さんは新しい変化をいやだと思っていないようだけど、今日僕といっしょに来てくれた、友人の野沢さんは、こういう技術が消えていくことについて心配しています。「こういう技術をもった人がだんだん減ってきているのです。浅井さんのような人が若い世代にそのやり方を伝えないといけないんですよ」といいます。

 今の日本では、ものはなんでも買ってくると思っているようだけれど、人が、自分で自然の材料から衣服を作ったり、自然をすみ家にしていたのは、そんな昔ではないのです。たとえ雨の日に「みの」をきないとしても、自然から必要な物を得るということからは学ぶことがあると思います。みなさん、はどう思いますか?

 グレッグ

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