知恵だより 100号

Dec. 21 1999

ワラぞうりを作る

小野里さんと一緒に熱心にワラぞうりをつくる=群馬県新治村須川たくみの里で

99年12月21日 気温:-10度 天気:晴時々曇り 風向き:北西
出発地:群馬県利根郡新治村猿ヶ京温泉=北緯36度44分07秒/東経138度53分 27秒
到着地:沼田市駅前=北緯36度38分34秒/東経139度02分01秒
歩いた距離:25Km

 けさ、沼田市に向かう途中で「たくみの里」というところをみつけて、立ちよらずにはいられませんでした。新治村が地域の活性化のために作った場所です。20種類以上もさまざまな工芸のなかから、僕は、朝の限られた時間を利用して、ワラ細工を習うことにしました。1時間もあればワラぞうりが一足作れるというのです。

 「たくみの里」は12年前に始まった地域おこし運動の一つです。村の人たちに新しい仕事をつくり出すことと、訪れる人たちが日本の伝統技術を実際に体験できるようにすることでした。「たくみの里」のパンフレットには、「いろりを囲んですわり、しばらくのあいだ時を忘れ、古くから伝わる伝統的な「わざ」を身につけてください」と書いてありました。

 「たくみの里」は、「ワラの家」、「木工の家」、「竹細工の家」、「陶芸の家」の四つだけでスタートしたそうですが、これまでを訪れた人たちはみんな大喜びだったそうです。「なくなりかけている伝統工芸の技術が体験できるからと、遠い所からもたくさんの人が訪ねてきます」と、案内の人が話してくれました。

 日本はコメの国だとよくいわれます。そこで、コメがどのようにして日本人に恵みをもたらしてきたかを知るために、「ワラの家」をのぞいてみることにしてみました。中に入ってまず目についたのは、ワラぞうりのほか、ワラぐつ、ながぐつなど、かべにぶら下げてあるワラ細工の数々です。畑や田んぼから作物をかついで運ぶ時に使う、ワラの肩当てや、ワラでできた雨具なども後ろの方の壁につるしてありました。手前の正面には「ワラの家」の主人がきちんとした姿勢で座っていました。小野里さんというおばあさんでした。

 簡単なものを作ってみることにしました。小野里さんが「ワラぞうりなら、一時間ほどで一足できますよ」といってくれました。まず、木製の道具を使って、ワラなわをぞうりの形に固定し、それから、ワラを一束手にしました。なわを押さえながら、ワラを通しては、左右に折り返してぞうりを編んでいきます。手の早さはびっくりするほどでした。まねをして編むために、小野里さんに待ってもらいながら、手を貸してもらったり、なおしてもらったりして、ついにはわらじが一足できあがりました。

できたてのワラぞうり=沼田市で

 はいてみると、ワラの編み目が、ちょっと痛みの残っている足の裏にとても気持ちよく感じられました。はだしのような感じで、3カ月以上もくつで歩き続けた足が、とても楽に動かせるように感じました。

 ワラでできたはきものを使うのがいいのでしょうか。現在、実際にはいている人は、ほんとうに少なくなってしまいました。「ワラの家」を訪ねるお客さんのなかには、「ワラぞうりはいつ、どんなときにはくんのですか」と聞く人がいるくらいだそうです。

 「たくみの里」をやっている人たちは、決して昔に戻るのをすすめているわけではありません。子どもの頃に親しんだ地方の文化を次の世代に引きつごうとし、同時に新しい地域社会をつくり出そうとしているのです。「子どもも、親たちも、若い人たちも、自分の手で何かを作る方法を習うのを喜んでくれています。教えている年寄りにとっても、ちょっとしたおこづかいになるし、気分をしゃっきりさせてくれ、生きがいを与えてくれているのです」と、小野里さんは話してくれました。

 1時間たらずでワラからはきものができたなんて、大成功だったと思います。ぞうり作りは僕たちが直面している環境問題の直接の解決法にはならないけれど、かつて自然のめぐみをそのまま受けて生活していた時代があったことを思いださせてくれます。「たくみの里」で自分たちの技を次の世代に引き継ごうと努力している人たちから、いくつものヒントを得られると思います。

 こういう人たちの持つ技から、どんなことが学べるとみなさんは思いますか

 グレッグ

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