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| Dec. 26 1999 |
足尾銅山
銅を精練した後の廃棄物の山の前に立つ坂原さん=足尾町松木で 99年12月26日 気温 : 2度 天気 : 晴 時々曇 風向き : 北西
現在地 : 栃木県上都賀郡足尾銅山=北緯36度38分47秒/東経139度24分36秒
歩いた距離 : 0 km足尾銅山とその精練所を囲む荒れた山々が、日本の工業化の最先端として栄えた歴史を物語っていました。同時にその光景は、日本のもっとも深刻で広範な公害の傷跡でもあります。繁栄と破壊を目の当たりにし、その歴史がどのように未来に役立っているかを学びました。
精銅後の廃棄物の丘から吹き上げられる砂=足尾町松木で 渡良瀬(わたらせ)谷を登って行く車の中で、「田中正造大学」という民間団体の事務局長をしている坂原(さかはら)さんが、足尾銅山が一番栄えていたころには4万人ほどの人がこの地域に住んでいたとを話してくれました。この銅山の繁栄によって、日本で最初の鉄橋や発電所がつくられたそうです。坂原さんの話によると、時がたつにつれて精練所からの煙と銅の鉱毒が発生し、周辺の40万人以上の人々に被害をもたらしました。(足尾銅山の歴史のくわしい情報は足尾町のウェブサイト=http://www.bekkoame.ne.jp/ha/ashio/=などで見ることができます)
足尾ダムに到着して周囲の山々を眺めると、僕の乾いた顔に、冷たい南風を感じました。「精練所から吹き出た煙りはこの谷を上り、煙に含まれていた亜硫酸は1万5千ヘクタールにも及ぶ森林に広がり、地面にしみ込み、木の根を破壊し、植物を枯らしてしまったのです」と、坂原さんは話しました。北の方をみると、1本の木も生えていない斜面が、せまい谷に沿って広がっています。木が植えられた数カ所を除けば、植物の生えている様子はまったく見られません。いったいどのくらいの人がこの実状を知っているのだろうと、僕は不安になってきました。
昔の精銅所の北側の斜面に新たに植えられた苗木の前に立つ神山さん。青いネッ トが飢えたシカから苗木を守るために張られている=足尾町大畑沢で さらに谷を上っていくと、坂原さんが丘の斜面にある小高い黒い砂の山を指して「これが精練後の廃棄物(はいきぶつ)の山です。この黒い砂は50年以上も前に捨てられたものです」といいました。褐色と真っ黒い色をした砂ぼこりが舞いあげられ、砂粒が僕の目の中に飛び込んできました。
坂原さんは、足尾の歴史と現状を、「人類は二度と同じ失敗を繰り返さない」という希望をもって語っていました。「私たちは、これまで追い求めてきた文明を考え直すべきだと思います。進歩だと思ってきたことが、実は人々を苦しめているのです。これは文明ではないのです。足尾は文明の意味を新しく見直す機会を作ってくれているのです。足尾はその完ぺきな教材です。足尾鉱毒事件をくりかえしてはならないということを、今はみんなよくわかっています」。
足尾の被害を訴え続けた田中正造はその日記の中で、次のように言っています。「真の文明とは、森林を破壊するものではないし、河川をだいなしにしてしまうものでもなく、村に被害を与えるものでもなく、人を殺すものでもない」。
午後、坂原さんと僕は、「足尾に緑を育てる会」の神山さんに会いました。神山さんたちは、足尾銅山周辺の汚染地域に、自然の緑を取り戻す努力を続けています。渡良瀬谷の鉱毒で傷つけられた斜面に森を復活させようという努力は、長く続けられてきました。
足尾の病んだ土で木を育てるためには、まず土がくずれるのを防がなければならない。階段状にされた土地は木わくで支えられており、ネットがシカから苗木を守り、あとはただ木が成長してくれることを祈るだけ=足尾町大畑沢で 「明治のおわりころから政府はここに木を植えようと試みてきましたが、実際に木が植えられ始めたのは40年前頃からです。4年前からは、学校やボランティア、見学者たちにも加わってもらうえるようにと取り組んできました」
百年の時間と約千億円のお金をつぎ込んで、山に戻ってきた緑は、ごくわずかに過ぎません。百年足らずの間に破壊されてしまった自然を再生するには、何世代もの年月が必要です。「木を植えたのはまだほんの針でついたくらいの範囲にすぎません」と、神山さんはいいました。斜面にそって植えられた苗木の間を歩きながら、「ここは風も強いし、土も汚染されています。その上植えた木の若芽がシカに食べられてしまうなど、最悪の状態です」と、神山さんはいいました。青い色のネットが植えられたばかりの若木の周囲に張り巡らされていましたが、すでに枯れかけているような若木が何本もありました。
斜面を下りながら神山さんは、知恵について話してくれました。「知恵は、人間が未来をより良くしたいからこそ出てくるはずなのです。私は、未来を良くするために、何をいまするべきなのかを考えているんです」。神山さんは、「すべきことはたくさんあります」といいます。
神山さんは現在は、生まれ故郷である足尾の不毛の丘に植えられている3700本の苗木の面倒をみています。
神山さんが自分自身にしているのと同じ質問を、僕は皆さんにもたずねてみたいとおもいます。
「より良い未来を作るために、皆さんはどんなことができますか?」
これがが皆さんの知恵になるかもしれません。
グレッグ
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