知恵だより 108号

Dec. 29 1999

道の上のサル

投げられたチョコレートを道路から大急ぎで拾うサル=新潟県の苗場スキー場近くで

1999年12月29日 気温:3度 天気:晴時々曇 風向き:南東
現在地:栃木県佐野市駅前=北緯36度18分50秒/東経139度34分47秒
歩いた距離:0 km

 今日は、新潟を歩いていたときの出来事を報告します。三国峠の報告(知恵だより098=12月19日)を思い出してください。苗場スキー場近くのリゾート地区で人になれてしまったサルと観光客との出会いを目撃したのです。

 雪におおわれた曲がり道を進んでいた僕は、道端に何か灰色のかたまりがあるのを見つけました。サルかなと思いました。新潟県の北部でサルに出会って以来、もっと近くでサルを見れないかとずっと思っていたからです。苗場ではずっと近くでサルを見ることができたのです。

 近づいてみると、灰色のかたまりの前には車が一台止まっていて、二人の若者が心配そうに窓から外を見ていました。灰色のかたまりは、何と立ちあがると1メートル以上もある大きなニホンザルだったのです。僕がさらに近づくと、チョコレートの包みをやって、車は離れていきました。僕とサルの距離は10メートルくらいしかありません。

 何が起きるだろうと思って、僕は立ち止まりました。サルは僕をじっと見つめています。道の反対側から僕はサルの写真をとりました。サルは僕の方に近づいてきます。後ろに下がろうとしたとき、別の車がやってきました。若い二人連れで、男の方が、袋を取り出して、チョコレートをサルの方にまき始めたのです。サルはイヌのように、男の人に向かって後ろ足で立ちあがって寄りかかってきました。男の人はふざけて、チョコレートを女の人の方に投げ、サルもそっちのほうに動きました。女の人はびっくりしていました。

チョコレートを一箱平らげた後でも、もっと食べ物が欲しいという顔をするサル=新潟県苗場スキー場近くで

 僕は本当に驚いて見ていました。「このサルは有名なんですか」とたずねました。「たまたまサルに出会って、チョコレートがあったと思い出しただけです」といいます。「みんな、こんなふうにサルにエサをやるんですか」と聞いたら、エサやりに夢中になっていた二人は、返事をせずに車に戻っていきました。女の人がチョコレートの包みをもったままドアを閉めると、サルは車の天井に上って、窓に手を伸ばして彼女からチョコレートの箱を引っ張り取りました。女の人は驚いて声を上げ、車はそのまま走っていったのです。

 またサルと僕とだけになりました。サルはチョコレートの包み紙を何度もなめ、そして僕を見つめたのです。「食べる物はないよ」と僕は言いました。サルは、道の真ん中まで出てきて、座り込んでしまいました。交通事故にあうのを待っているかのようです。「あっちにいけ」と僕がいっても、無視しています。とうとう僕は雪の玉を投げて、サルはやっと道路から離れていきました。

 苗場に向かって下っていく途中で、さらにサルに出会いました。今度はサルたちが何頭も森の木に座り込んでいます。サルたちは若い枝の皮をむいていました。

サルが三国峠の群馬県側で問題を引き起こしているために、こんな警告の看板まで掲げてありました=群馬県永井宿

 群馬県への途中にサルに出会うかもしれないとは言われていましたが、あんなにずうずうしいサルに出会うとは思っていませんでした。地元旅館の主人の細谷さんは、冬場は最悪だといいます。冬場にエサがなくなるからなのか、スキー客や観光客が面白がってエサをやるからなのか、どちらが影響しているのでしょう。「みんな、サルにえさをやることが悪いことだとは思ってないんですよ」と細谷さんはいいます。

 「エサをやることで、サルたちは人間の食べ物になれていきます。自分で食べ物を集めなくてもいいということを覚えると、サルたちは観光客からのエサで生きていくようになってしまいます」と細谷さんは説明します。サルの健康状態がどうなるのか、またえさを自分で集める能力がどうなってしまうのか、心配です。しかも道路にサルがいついてしまうのは、車を運転する人間にとっても、サルにとっても危険なことです。

 人と動物が一緒にうまく暮らすのは、そう簡単なことではないとみんなも思っているでしょう。新潟の人とサルについて、どう思いますか。

 グレッグ

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